あるがままの心

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権利を探して 26

彼はかつて一介の労働者だった
彼はある日突然仕事を失った

勤務時間を過ぎても仕事は終わらない
増える一方の仕事に日常が埋もれていく

それはまるで日常に仕切られていた「労働」という枠組みが決壊し
押し寄せたそれは生活という家を飲み込むかのようだった

休みというものは其処には存在しない
定期的に人が入れ替わっていく世界―機械の部品のように

それは精神を摩耗させ
身体をも蝕んでいく
だがすり切れた心にはそれに気づく暇さえなかった

それは人生をも犠牲にした生き方だった
それらの利益は殆どが経営者の懐に吸い上げられていた

それは戦前に存在した奴隷制度と何が違うだろうか

それは突然やってきた―彼が目覚めた時
―身体が動かなかった

高熱にうなされ
食事もろくに喉を通らなくなっていた

職場に事情を伝えるとその反応は実に冷ややかだった
―もう来なくていいよ―

その一言だけを置いていき
そこに労りや励ましは存在しなかった

彼は布団の中で蹲り涙を流す

彼は当時を振り返ってこのように言う

―自分は使い捨ての道具のようだった
そう―私はその場では人間ですらなかった

淡々と働く機械と同じだった―

金銭は―仕事は…人を機械にすら貶めるのか…
働けない者は…生きていてはいけないというのか

彼は初めて日常的に生きてきて何ら疑問を持たなかった社会に恐怖した
この社会は働けない者に死ねと言うのか…
それは感情の必要のない―求められることのない―機械そのものだった

今までに生きてきて
これほどまでに人生に虚しさを感じたことはなかった

自分は生きていながらにして人間らしい生活の殆どをそぎ落としていたのだ…

何て皮肉だろう
少しでも豊かに生きていたくて働いていたというのに…
その労働のために自分自身を犠牲にしていたなんて…

自分は賃金のために―その金銭のために
何を失っていたというのか…

熱でうなされ朦朧とした意識の中で朧な声が聞こえる―

意識がはっきりしてくるにつれて
胸に抱いた微かなその声は段々と大きくなっていった

そして彼は思い至るのだ
これは自分一人だけの想いだろうか―と…

他にも想いを同じくする人がいるのではないか…

彼は旅に出ようと決意する
今までの生活との決別だった

それが人の生き方だろうか
そんな問いかけから始まった旅
そして彼はとある老人と出逢うことになる

そして町で見かけたホームレス
その姿はそれまでの自分であるかのようだった

あの頃の自分が蘇る
彼を通して―青年は問われたのだ

自らの生き方を

そして青年は彼に話しかけたのだった

それは「生き方」に対する彼の回答だった





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  1. 2014/08/12(火) 14:32:52|
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