あるがままの心

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権利を探して 10

今や街を支配が覆い
隣国の戦争の足跡が静かに近づいていた
街は恐怖に息を殺すように―何かに耐えるように
ひっそりと佇む

政治家はこの国を護るために戦争を賛美する
国の退廃した経済がそれで蘇るのだと
失業した労働者がこれで生き返るのだと彼らは説いた
暗澹として雰囲気が街を覆う中―その呼びかけは嵐に巻き起こる雷のようだった
生活に見通しはつかず―夢や希望といった煌めきが地に堕ちている―喜びが見出せない…

世界に対する失望が―人々の心に巣くう時―更なる絶望が世界に訪れるだろう
しかし誰一人として戦争を―殺し合いを―悲劇を望んではいない

その時言い知れぬ運命とも言える波がこの世界に近づきつつあることを彼は悟る
呼びかけようにも誰もが口を閉ざし―眼を背け―無視をする
そうすれば問題が消えるかのように―見ないふりをする

―そうじゃない―…

彼は拳を握りしめて呟いた

あの時のあの言葉が心に迫る

そう―あの時―とある教師が
人生で出逢った初めての―信じられる人が
彼の心に残しておいてくれた言葉を

居場所とは単なる場所のことではなかった
それは自らを受け入れてくれる―許してくれる他者の存在であり
―他でもないその他者を指して―居場所というのだと―彼はようやく知った

それは空間のことではない
それは紛れもない人間の温もり―眼差し―その心の在処を言うのだと

彼は語りかけた

欲しいのは戦場じゃない―死に場所じゃない
生きていてもいいのだと―思える場所―生きていく場所だ

誰かと共にいることが「楽しい」ということだけでもいいのだと彼は言う

共に笑って―手を取り―乾杯して
時には愚痴を零し―弱音を吐いたとしても―励まし合って
それは共に生きるということに他ならない

人と繋がることに喜びが存在し―認め合うことができれば
明日も生きていこうと人は思えるはずだ

独りではないのだと安心すれば
それは生きていく力になるはずだ

だからこそ一人より二人…二人より三人…
増えれば増えるほど広がる力がある

一人一人は弱い生き物だが
その弱さこそが―人と人とを結びつける絆になり
そして個人の力の神髄は―その関係性の中にこそ―秘められていることを
誰もが知っているはずだ

やりたいことがある
好きなことがある
熱中できることがある
それが立派な生きる希望に成り得る

勇気を振り絞って上げた声に批判もあった
だが賛成の声もあった
彼らは自分は独りではないと知ったからだった

彼は批判を恐れなかった

既に批判など幾多も越えてきた

地域から阻害され
果てには家族からさえも居場所を奪われ
まるで社会から存在を認められず
暗に「死ね」と言われているのでは錯覚するほどの過酷な状況の中
それでも彼はこうして生き抜いてきた

―いつか君の声を必要とする人が絶対に出てくる
 だから諦めてはいけない―

別れ際に教師から言われた言葉は―彼にとって心を照らす灯台となり
彼の歩む先を導き―そして護る光となって胸に輝き続けている

批判は前に進んでいる証であり

批判を受け止め前に進める―もう彼には共に歩む仲間がいる

納得できないことがあるのならそれを言える場所を創るために
言えずに認めてしまったら―いつしかそれは当たり前になってしまうから

そうなってから後悔しても遅いのだ
社会の流れは食い止められない
今この瞬間にできることがあるのなら
やるしかないのだと―彼は信じていた

反対するだけが方法ではない

むしろ肯定できる場所―そんな居場所こそ必要なのだと
彼はそうすることでこの流れに抗おうと決めたのだ





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  1. 2014/07/27(日) 16:07:20|
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