あるがままの心

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権利を探して 9

彼は自分自身を語ってみたのだった

この生き辛さがどこからくるものなのか
彼女なら知っているかもしれない――と…

周りの大人たちは彼の未熟さをこのように責め続けてきた

お前はバカだから―
お前は努力が足りないから―

それに彼は納得ができなかったのかもしれない

自分の所為だけではないと心の中で何かが叫んでいた
おかしい―と…そんなはずはない―と…

本当にそうなのか―
それとも…

それは彼にとって生きていくための問いだった
その答えを彼は彼女に求めたのだった

彼女は頷きながら彼の話にじっと耳を傾けていた

それは彼が初めて自らの生きる苦しみを他者に語った瞬間だった

彼はまだ知らない
否定され―見下され―嘲笑われ―頼りにした大人からも見放され
そして大人たちを―他人を―信じられないと思っていた自らが
進んでその大人という存在に―他者に自分をさらけだすことの尊さを

それは唯の会話ではない

彼はこの世界で初めて―人を信じることを学んだのであり
それほどまでに多くのものを与えた会話だった

それは彼にとって今まで受けたどんな授業よりも学びと気づきに溢れ
これほどまでにその人間性によって教え示されたこともまたなかった

話しが終わって―彼女はまず「ありがとう」と彼に頭を下げた
自分に言ってくれてありがとう―と彼女は彼に敬意を表したのだった
彼の話の重さを―背負う過去を―その苦しみを―理解したからこその態度だった
それは子どもに対する大人の態度ではなかった
それは彼を子どもではなく―一人の人間として尊重した言葉だった

彼女は言う
生きにくいのならそれはあなたの所為じゃない―と
社会はその個人を取り巻く全ての人の集まりだとした上で―
彼女はこのように語った

君が生き辛いと感じているのなら
それは君がそういう社会で生きているということ
それは君の周りにいる全ての人が君にとって生き辛い場所を作っているということ
だから君は生きにくさを否定しなくていいの―そういう自分を責めなくていいの
生きるのが苦しい―て言っていいのよ
こんな所は嫌だって―言っていいの
それは君だけの所為じゃなくて―みんなの所為だから

彼は彼女に問いかける
周りの人が自分の社会を作っているのなら
そこで生きにくい人は―どうすればいいのか―と

彼女は微笑む
君が君らしくいられる場所を探せばいい―と
君が君として生きていける場所を作ればいい―と

彼女は説明する
それは特別な人がすることじゃない
社会で生きる全ての人が―無意識のうちにやっていること

許し―認め続ければいい
君自身を―君と同じような境遇の人たちを
それがいつかきっと場所となり―社会の人々を変えていくなら
社会もまた変わっていく―社会を創るのは人だから

「……」
彼は言葉を失った
どういう意味かが胸に落ちてこなかった

でも―こんなにも胸が熱くなるのは何故だろう
それは彼の心を打ったのだ
彼は生きていてもいいのだと―それだけは胸に―この心に届いたのだ

それはずっと求めていた関係であり
与えて欲しいと願い続けていた態度であり―眼差しであり―人との関わりだった
そう―彼はずっと―認めて欲しかったのだ

彼はこの日のことを―その言葉を―喜びを―優しさを
生涯決して忘れることはないだろう
彼にとってこの言葉はいずれ生きる道標となるのだから




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  1. 2014/07/25(金) 10:13:41|
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